ログハウス建設の計画

更新2017/02/05  indexへ戻る

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この記事は1996年ログハウスを計画した当時の考察です。10年近く経った今では、セルフビルトのマニュアルが整備されて、もっと簡単に作ることができるかもしれません。いづれにしても大変な作業です。ログは重く歳は待ってくれません。思い切ったら早急に実行しましょう。

  1. どのキットにするか、かなり迷う。
  2. 建設地の状況
  3. ログハウスの設計
  4. ログハウスを人力で建てる準備
  5. 確認申請をする。

1、どのキットにするか、かなり迷う。

ログハウスと言えば丸太を組んだ野趣味あふれた小屋が思い浮かぶが、とても丸太を削ってログを組むなど出来ないし、豪快な建物はちょと野趣味すぎて細身の僕は負けてしまう。マシーンカットのログハウスなら、なんとか自分で建てられるのではないかと、色々と探してみた。漠然とログハウスが欲しいなと思っていた時は、フリージアログホームにあこがれていた。値段は安そうだし、電化製品などおまけがついていてお徳、でもよく見るとログのようでログでないような、造作部分が多そうで、ちょとセルフビルト向きではないように思われた。

ロ グハウスの雑誌、夢丸の広告からいくつかの目的にかないそうな業者にカタログを請求した。広告でカタログ代金を求める業者には代金を送るなどして、各社のカタログを集めた。ほとんどは無料でカタログを送ってもらえた、中には、広告では無料ですと言っておきながら、後でカタログ代を請求してきた業者があり、苦しそうだったので、そのままそっくり郵送代をつけて返送した。このようにして第一関門の業者選びが始まった。
ビックフットは色々なカタログあり豪華、なかなかこぎれいにまとめており、良い感じだが、妻壁部がログでなく2x4で組むらしく、自分で組むのに自信がないのでやめにした。


ここで初めて、妻壁部分、いわゆるロフトの三角の壁の部分がログでなければならない、という基準ができた。ビッグボックスホンカ、色々なログハウスが紹介されていた。ホンカの小諸にあるモデルハウスは自然に溶け込もうとしている姿がよっかた。トヨサカはフィンランドログハウスの小冊子は丁寧な説明で魅力的だった。100マイルハウス、ここはカナディアンログハウスで、他に、マウンテンホームズ、櫻屋ホーム、茜プランニング、ランタサルミジャパンなどのカタログを取り寄せた。雑誌の写真を見ると、ログ材のヒビ割れが気になって、それを防ぐにはラミネート材がよいと書かれていたので、それではラミネートにしよう思った。カタログを見ると豊田通商が扱っている(COT−84)の間取りが気に入ったので、蓼科のモデルハウスを見に行った。すっきりとまとまって、ちょっとしゃれた感じだった。先ずこれが第一候補となった。代理店のキーストーンにお世話になったが、残念ながら値段の折り合いがつかなかったのであきらめた。ログハウス施工マニュアルを購入することができ大変参考になった。後で思うに、ロフトが狭く感じたのは,屋根の立ち上がりがロフトの床からすぐに上がっているせいだと分かった。ビアンカ(第一貿易株式会社)は手ごろな感じがしたので、聖高原に建っている現物を見にいった。ちょと施工が悪かったせいか作りが雑で興味をなくした。ここはラミネートを売りにしていた。数年間、何かがある毎にカタログが送られてきた。商売は熱心。タロインターナショナルも候補に上がっていた。千葉にモデルハウスがあるとのことで出かけてみた。数軒のログハウスが建っており、細かく見たところ、なんとなく自分でも作れそうだという感触を得た。仕上がりが雑な感じだった。セルフビルト体験会があるとのことで、とにかく参加してみた。ログ運びと、ログのダボ打ちが体験でき、ややこしそうな図面の説明を受けたが、これならなんとか出来そうだと思った。
そこで実際にログを建てている人を紹介してもらい、その現場まで出かけてみた。ログ積みが終わり、屋根も窓も完成、そのときは室内の作業中であった。ここのログ材は太い幅120mmのいかにも重そうなものだった。それだけに重厚な感じだった。この人から「ほんとうに自分でやる覚悟は出来てるの」と言われ、こりゃ大変だなと思った。現在彼はログ屋さんになってしまった。


95mm巾で組まれたログハウスを見たが、少し弱々しい感じがした。
ログ材の太さは、太いほうがいいなあと思っていたが、「95mmの材で充分です」と、タロから言われ、費用の点からも細い方に決めた。後で組んでみて細くてよかった。ログ材は大変に重い。

各カタログを比べるて気がついたのが、妻壁の作り方だった。
どこかで読んだが、日本ではログ材は一階部分だけで、ロフト部の壁は板材で作らなければならないとか。しかし、壁はすべてログで組んだほうが楽に建てられそうだし、すべてが木材のほうが真のログハウスだと思い、タロのキットに決定した。また、ほとんど全ての材がキットに用意されており、素人に安心させる内容だ。合板を使うような部分はなく、すべて無垢材でまとめてあるのも魅力的であった。またログ材の間に入れる断熱材が植物繊維とのこと、かなり自然に近い物が出来そうだ。

後に、業者が建てているログを見たところ、野地板に無垢材が支給されているにもかかわらず、床板と同じように幅の狭い板を打ちつけなければならない為か、コンパネを貼って、効率をはかっていた。合板は結露や雨漏りで、何十年かすると、水を含み膨れ接着が剥がれ、ログにはふさわしくない。合板のほうが丈夫なのだろうか。合板は使わないことにしよう。接着剤から発生する有害ガスも気になる。シックハウスはごめんだ。


ログキットはタロのLO-4に決定。(タロTALOのサイトはこちら)


ログハウスの構造について知ろうとログハウス協会からマニュアルを購入したが、現在はインターネットが発達してすばらしい情報が簡単に手に入るようになった。

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2、建設地の状況

雑木林でブッシュに覆われ、蔦がからまり、どこに家を建てれば良いのか見当もつかなかった。雪で倒れ地面にへばりついた細い木々を片っ端から切り払い、地面が見えるようにした。

とりあえず、私道から車が入り、どのように止めて、どんな感じで玄関ドアを開けるか、想像しながら家の位置を思い浮かべた。家の周りの木の配置を考えると、ベランダには夏の日差し和らげる木があり家を囲むように樹木がある、そんなイメージを描いていた。うまい具合に、一本のすばらしい白樺と、枝が広がった夏の日差しを気持ち良く遮る落葉樹のサクラではないが、似たような木が、生えていた。その場所は、少し低くなっており、どうも水の通り道になっているようだ。後に、基礎の水はけで苦労することになる。

緩やかな傾斜があるが、ブッシュに覆われていたので、ほとんど平らな地面だと思っていたら、実際に透明のビニールホースでレベルを計ってみると、10m下がると1m50cmぐらい低くなっており見た目では緩やかな坂に見えたが、結構下がって、目だけでは錯覚して正しく判断出来ないものだと感じた。

ここの気候は、雪が多く、累積雪1m50cmぐらい、地面凍結は10cm位、最低気温は零下15度、、また霧の多い湿度の高い場所のようだ。霧下蕎麦が出来るそうな。

ログを建てる場所には雑木に覆われており、残念だが直径40cm位の松の木は抜いてしまった。工務店の人は、松の木の根元上2m高程で切り、ユンボで揺さぶって、木を根ごと抜いてしまった。この方法が楽に抜けるそうだ。

積雪の多い所では除雪の雪をどのように貯めておくか注意が必要、道から十分離したほうが除雪が楽と思われる。

特に家の向きを決めるのに、迷いに迷った。真南ではなく、南東方向にした。家を建てる場所、向きは回りの景色の見え方をよく、何度も、出来れば四季を通して観察し、居間の窓からの景色、台所からの景色等は、色々と想像して検討したほうが、後々悔やまなくてすむようだ。もし、素晴らしい山が見えるのなら、その場所を居間として、間取りを考えよう。お隣があれば、目が合わないように考えよう。

この場所では我が家が初めてだったので、お隣のことは頭に無かったが、10年近く経つとまわりに家が建ち、視野に家が入り気になるようになった。木を植えたりして環境を改善しなければならない。

また、以前見えていた山が律儀な方が世話をする杉が育ち見え辛くなってしまった。

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3、ログハウスの設計

ログキットはタロインターナショナルで販売している、フィンランドログのLO-4を選んだ。基本構造は田の字の間取りで、これを基本に間取りが設計できるキットだ。

マシーンカット(あらかじめ機械で加工されたログ材、メーカーによって加工の形状に特徴がある)で、ログ材は厚み95mm巾169mm、見た目は厚みが薄く華奢に感じたが、タロの説明では十分な強度があるので安心してよいとのこと、予算の都合もあってこの寸法に決定。実際にログを運び、積み上げる時、この太さで十分、いや良かった。とにかくログは重い。

多雪地帯なので、屋根の厚み、つまり垂木巾は300mmとキットでは150mmの倍の厚みとなった。雪が積もってもビクともせず、屋根からの断熱も十分だろう。垂木が厚いと屋根がどっしりとして、バランスがよかった。建ててから実際に積もった雪は50cm程で、自然に轟音と共に落下して、雪降ろしはまったく必要がない。積雪は降り積もって1m50cm位になるので、基礎高を1m80cm位にした。

実際は土地が緩斜面であったので、基礎高は1mから2mの高さになった。布基礎(鉄筋コンクリートの壁)にした。基礎の費用は馬鹿にならず、とにかく定尺のコンパネで基礎組が出来たほうがはるかに安く出来そうだ。造成して、地面を平らに出来ればその方が安くつきそうだが、土地の自然がかなり破壊されるだろう。

屋根に積もった雪は滑り落ちて2m強積もるが、基礎高が高ければ家が埋もれることもなく安心、家回りの除雪もほとんど必要ない。4シーズン冬を過ごしたが、ログ壁に雪がかかることはなく、除雪の必要はない。屋根から落下する雪は、屋根の角度が急であれば、落ちやすいが雪たまりの山はログ壁に近づき、ぶつかりやすい。屋根の角度が緩やかであれば滑り落ちる雪の山はログ壁から離れる。

ログやベランダを支える束は直径30cmのボイド管を使ったコンクリートの円柱にした。基礎下は十分な空間ができ、倉庫として活用できる。固定資産の算定時に物置としての評価を逃れようと、出入り口をブロック等で塞いで、算定が終わったら入り口を開ける建て方がなぜか一般的だ。ちょっと正直すぎたようだ。信濃町では高さ1m50cmまでは、物置の評価はないらしい。

基礎の通風口は風の流れをよく考えて、多めにしたほうが、湿気対策になる。風呂場下には換気口がなく空気の流れが止まって、じめじめしている。基礎の地べたは土のままでいいと思ったが、冬は10cmもの霜柱が立ち、湿度が高く、雪融け時は水が浮き出し流れ、いまだにパイプを埋めたり、ビニールを敷きこんだりして、まだ満足した状態ではない。

ログハウス間取りクリックで拡大  TALOログハウスLO-4は、基本形が田の字になっている。地所の関係から玄関はテラスの北の反対側に必要だった。水周りには、窓は必須、台所は楽しく美味しい食事を作るため、広さが欲しい。思案の末左図のような間取りになった。

玄関の階段上がり場にログキットでは屋根を考えなかったが、一冬過ごしてみて、ドアが雪でふさがるため、どうしても雪よけが必要になった。後にセトリングが安定した時点でログの残り材を利用して製作した。吹雪いた時も苦無く出入りが出来る。また、狭いながらも玄関ホールの先にもドアを付け、出入り時の寒風の侵入を防いでいる。この玄関の欠点は安全のために窓が小さく、さらに屋根を付けた為、薄暗くなってしまたことだ。電灯を点ければよいことだ。

薪ストーブは吹き抜けの部屋に設置したが、手前の天井のある台所スペースや風呂側には暖気が進むまで時間が掛かり、ロフトとの温度差が大きく暖気循環の工夫が必要だ。ただこの位置だと煙突を垂直に立てるだけなので取り付けが楽であった。今のところ雪の落下による煙突の曲がり等はない。

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4、ログハウスを人力で建てる準備


ログを自力で建てようと計画した時、出来るだけ大勢の助っ人を集めるため、年初めに「今年の夏休みはログビルトで楽しみましょう」と、手伝ってくれそうな人に案内の手紙を送った。5月ごろには夏休みの予定表を送り、徐々に皆を、ログハウスを建てようという気持ちもっていった。皆、気持ちよくその気になってくれた。

コンテナーからログ材を下ろす作業は想像しただけでも大変なこと、とにかく大勢の力ある人が欲しかった。目標として、出来るだけ人力でやろうと決めた。コンテナーから建築地までは150m程あったので、工務店にトラックを用意してもらった。

仲間のおかげでログハウスの建設は着実に進行していった。建設中地元の人が何人か心配してか見に来てくれた。ログハウスには興味があるようだ。

ログ積は、仲間がいなかったら出来なかっただろう。みなさんほんとうにありがとうございました。

最長13mのログ材はとても一人では運べない。ところが、怪力の仲間が存在した。このログハウスキットには棟木も1本1本のログ材4本で組み上げるものであったので、なんとか全ての材を人力で積むことができた。業者の作業を観察したところ、小型クレーン車で吊り上げ、3,4人で3日ほどで組み上げていた。しかし、人力だけにこだわるのも、人生にとって楽しく苦しい経験になる。

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5、確認申請をする。

不動産屋は自由に建てられますよとの話、場所によっては家を自由勝手に建てられる所があるかもしれないが、心配だったので役場に確認に行ったところ、ここ信濃町では違法開発を防ぐため原野と言えども建築許可が必要だと言う。幸いタロで確認申請書類をまとめてくれるとの事、が代行申請には10万円かかるというので、自分で申請に挑戦した。信濃町役場に申請方法を聞きに行くと、先ず、道路許可書が必要と言う。つまり建築地と公道に2m幅の道でつながっているかどうかの証明書がいるとのこと。(この場所での建築は初めてだったので役場担当者がわざわざ現状を確認しにいったらしい。まあ正しいことだが。)それではと申請して、この書類が出来たら役場から郵送で長野地方事務所に出してくれないかとお願いしたが駄目。書類をまとめ地方事務所に提出するだけで埼玉と長野を数回往復しなければならなかった。

提出後数週間して、建築基準法第6条第4項の規定による期限内に確認できない旨の通知書をもらう。タロに相談し図面を訂正してもらう。

1、便所の種類は?水洗の場合は浄化槽設計概要書と配置図に浄化槽の位置の記入が必要とのこと。めんどうなので汲み取りに変更。

2、積雪荷重は?図面に90cmで雪下ろしをすると書いたが、これを150cmに変更。

3、2階の天井高と床の防湿方法は?天井高は記入漏れ、防湿は基礎壁に換気孔が書かれていなかったので追加記入。

4、耐力壁の長さについて?これは風呂場の外壁のログ一片が1m満たないとのことで、予定の窓を半分の大きさの物に交換してログの長さを1mに書き換えた。風呂の窓が狭くなった。

最終的には地方事務所で素人だから教えてくださいと頼みそのばで、定規とボールペンと印鑑を片手に修正して無事確認申請書提出し確認通知書をもらった。これで、とりあえず合法的にログ建設ができることになった。

その後、確認申請は行政が何に使ったかは分からなかった。税務課が課税査定に来て、図面を見たいというので確認申請書の図面を見せただけだ。今(2006年)建築確認が話題になっているが、馬鹿正直に守っている人がどれほどいるだろうか。基礎にブロックで出入り部を作り、税務署の査定後に作り変えることなど常識化しているらし。

こんな調子でやれば、自分で確認申請はできるでしょう。また最近の行政担当者は当時とくらべ優しく分かりやすくなってきたので、それほど不愉快な思いはしなくてすむだろう。

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