黒姫便り 10.10.20.

舗装された町道から山荘までの導入路は砂利道。そこは季節ごとに山野草が入れ替わり立ち替わり咲き、10月初めは山アザミが咲きみだれ、わだちの真ん中がお花畑。伸び過ぎたアザミは折れ曲がりしおれ、わが山荘の訪問者は道なき道を進まなければならない。いささか錆加減の紫色のヤマリンドウが例年より多く咲いている。リンドウも背丈があるが花が重いのか地べたにへばりついて可憐に咲いている。さらにこの時期、紫の花で目立つのがヤマトリカブト、艶やかに、あちらこちら咲いている。

そろそろ出そうなムラサキシメジを捜そうと森に入ると偶然濃い紫のキノコが、調べるとムラサキフウセンタケと言う。紫の目立つ季節だ。

写真は我が家の畑の大根と手前が今頃見ごろになったナスタチュウム、さらに手前はリンドウ、なにか不釣合いの畑だ。下はムラサキフウセンタケ苦味があるが毒キノコではないそうだ。美味そうではない。

わが勝手に育ての畑は、小さなズッキーニが3本と大きな青いトマトが6個とダイコンが大根らしくなってきた。殆んど腐ってしまうトマトが育ったことは珍しいことだった。ニンニクを植え今年の作物は終了。11月になれば例年なら寒波が襲い霜か雪が降るだろう。猛暑だった今年はどのような冬を迎えるのだろうか。


今週になってやっと冷え込んできた。今期初の薪ストーブに火を入れ暖かく燃え上がり久しぶりに芯から温まった。気温は7℃から18℃と、厳しい冷え方ではない。周りの木々は3分の2程緑を残し、夏が暑かったのか枝の先の葉が枯れた木が目立ち、僅かな風で葉が落ち地面は落ち葉に覆われてきたが、色鮮やかな葉まだない。かろうじて色づいたのは上の写真のウルシの葉とモミジの一部の葉のみ、まだ紅葉は期待できない。いつもウダイカンバが一番早く落葉し、シラカバも次に散ってしまう。木によって落葉の時期が随分差があるものだ。

ある晴れた朝7時過ぎ山荘の客人が庭の松の木を飛ぶように伝って行ったリス2匹を見た言う。好かった、ちゃんとリスが来ているんだ。何とかしてまたベランダの給餌台に呼びたいものだ。給餌台にはキョロキョロと首を前後左右に振りながらアカゲラが訪れた。ヤマガラ、シジュウカラ、ゴジュウガラ、コガラは餌を食べに来る回数が増えてきた。

山荘の近くの土地を購入した人は、雑木を片っ端から切り、見違えるようにすっきりさせてしまった。まだその土地がどんな姿なのかも見極めないで切ってしまった。リースに最適な赤い実のツルウメモドキが何本もあったのに残念。しばらく時間を掛けて四季を観察して欲しかった。この土地の木は若いと言っても40年も経っている。無下に切るのは惜しい。中々木が育たない。まあご自分の土地とやかく言う筋合いはないのだか。沢沿いのブッシュを切り詰めれば、獣は我が家のブッシュを通り抜けていくに違いない。熊さんに遭えるかも知れない。熊さん達に充分気をつけなければならないだろう。

ニュースによると方々でツキノワグマとの遭遇が報じられているが、ここ信濃町ではいつものように熊がうろつき、異常に多いとは聞かない。必ずしも木の実不足だけが原因でなく、里山の自然林化が熊の食料を豊富にして栄養過多になり、冬眠もせず集落に近接して暮らすようになったのが人間との遭遇多発するようになったとも言う。殆んどが出会いがしらに襲われているらしい。人里に下りてくるのは熊が人を恐れなくなったらしい。しかし人はみだりに恐れるのではなく、少しは動物的感覚を取り戻して緊張して行動すべきだと思う。あくまでも人間が頂点で熊は人間を恐れていなければならない。そんな関係の中で熊と付き合いたいものだ。

この近くにC・W・ニコルさんが始めたアファンの森があるが、その財団法人がビジネスチャンスを生かしたのか大きなゲストハウスが完成した。さらに活躍するらしい。

長野県で一番問題になっているのは放置人工林で、改めて間伐をして林業化するか人工林を伐採して自然化するのか資金と環境や永続性が絡み合い難しい問題だ。生活の場でない放置里山を整備して里山化して永続させるには無理があると思う。都会人が時々楽しむのは面白いが、これは事業化しなければ継続できそうもない。

つまり自然の中で生活をするには獣と共存していることを認識して、常に意識していなければならない。しかし、事故はそれを忘れた時にやって来るし、熊問題も鹿問題も猪問題も猿問題もありとあらゆる生物問題は自然と人工の戦い、人間とは何かを考えるしかない。

森林保護も色々は角度から見て、人それぞれ好きにやるしかないかな。狭いながらもこの空間を動物と話しながら森の生活を楽しもうっと。