黒姫便り 07.03.13.

3月の声を聞き里の田んぼの雪は消え、雪を捜そうにも日陰にわずかに残るだけ、あっけなく冬が終わってしまったのでしょうか。里からわずか80mほど標高の高い山荘付近の雪はかろうじて残っていました。雪のある所20cm。 森の60%は土が見えています。南の地面にはフキノトウが出てきました。しかし、木々の芽は春はもう少し先だと言いたげに硬くしまっています。なんだか物足りない寂しい冬で終わってしまうのでしょうか。

なんと今冬最後の贈り物、3月11日の夜から雪が降り始め翌朝は30cmの積雪。待ってましたと除雪車の到来、この日は1日中雪が舞い、3月13日は12cm。積雪62cm、今年最高の雪景色になりました。
美しい景色ですね。黒姫の冬はこうでなくては。ほんとうにすばらしい贈り物でした。

さあ、これから、お待ちかねフキノトウやコシアブラやタラノメの美味しい春になります。

ものたりない冬 最後の贈り物
地面が現われた3月10日もう春を迎えたのだろうか 美しい雪3月10日今冬最後の贈り物

長野で見る深夜番組で野生動物による被害の話をしていました。

都会人にとって野生動物は珍しく、見ていると可愛いものですが、山に接した所では動物と人とがぶつかり合って被害を受けています。害獣として狩猟駆除される動物はここ黒姫ではイノシシと植林した苗を食べるウサギでしょうか。クマは怖がられ人を襲ったとして駆除されます。(熊は電柵で農作物の被害は減っているようです。人が生活残飯で熊を呼び込み、熊が人に驚いて、人を襲うのではないのでしょうか。)そして、来て欲しくないのがサルでしょうか。サルといえば志賀高原でスキー客の車中のお菓子や果物を狙う車上荒らしサルが、東京のTVで話題になっていました。コショウ入りのお菓子を狙わさせて、お菓子はこりごりだと教えてやればいいのになんて思うのですが、だれか実験してみませんか。

野生動物の害で深刻なのは、ここ長野ではニホンジカだそうです。そういえば関東では丹沢の山がシカに食いつぶされており、つい最近では、自動車道に紛れ込んだシカとの交通事故が話題になっていました。食料を求めて平地にも山にも飢えと戦い移動しており、人から追われなければ作物を食べ、山の下草を食べ、採算が合わないといって放置された山間牧場に進出、林を食べ、森を食べ森を全滅させて、山を崩してしまう、信じられないような被害が出ているそうです。増加数と餌場のバランスが崩れてシカの異常行動が新たな害を生み出しているようです。そういえば小笠原諸島の野生化ヤギが増えすぎ草を食べつくし地面が露出し流され島が削られ海が濁り島の環境が崩壊している様子の番組を見たことがあります。これも人間のエゴで安易なヤギ飼育から始まっています。

害獣の被害で農作物の被害額よりはるかに食害による森林破壊による山地崩落が大きく、山地崩落を放置しておけば土石流などによる災害が発生する為、崩落山地の復興に莫大な費用が掛かるとのこと、大変だ。山奥のことなどなかなか東京永田町霞ヶ関には届きにくく、やっと今年環境省?で資料収集を開始だそうです。

増えすぎた鹿は北上を始め南アルプスを手中に収め、アルプスのお花畑を食いつぶさんばかりで、近いうちにお花畑が全滅してしまうだろう山小屋の主人が話していました。中央アルプスにもいずれは迫るだろうと話していました。氷河時代の生き残りの高山植物の絶滅の危機が迫って来ているとのことです。もっとも登山者増加の自然破壊相当なものでしょう。大変だ。

野生動物保護の観点から害獣駆除期間や駆除個体数が限られ、とわ言うものの年間全国で10万頭ほど駆除、えっ、ほんとう、増加の一歩をたどり、平地では人から追われ、野原に住むシカは山間部に追われ、地球温暖化か山地の雪が少なく多くが越冬し増加、とうとう食を求めて鹿が標高2000m以上まで上って来たといいます。

鹿は本来人との微妙な関係で、ある個数駆除され頭数のバランスが保たれていたそうです。ところが猟友会会員の老齢化が冬場の狩猟期の過酷な肉体労働が困難になり計画された駆除頭数を達成出来ず、4,5年もすれば狩猟が出来なくなるだろうと言われているそうです。ここで70歳を過ぎた老猟師の生活が紹介されていました。山を駆けずり回るのは苦痛で引退したいが猟はみんなの共同で初めてなせる技、断ることも出来ない、若い人を猟友会に誘っても時間的制約で断られると、後継者発掘ができないと悩んでおられた。こんな状況で益々シカは増加していくという。老猟師が裏庭の冷凍庫を開け転がり出る肉を見ながら、こんなに食べきれないと苦笑する。くれれば食べるのに。大変だ。

乱暴な話ですが、昔は日本にもオオカミがいてオオカミが頂点で鹿を食べていた。だから鹿の頭数が安定していた。よってオオカミを日本の山に放すべきだと。色々な分野で研究されている教授群には面白い発想をする人がいるものです。絶滅したニホンオオカミをどこから連れて来るの、放っても人間が美味いと知ったらシカなんか食べないからね、しかも現在の動物の頂点は人間、これを動物と見ないで人間と野生動物とは別個だとは考えられないし、つまり人が解決しなければ。「面白いことをおしゃるのね先生」どまりにしておきましょう。

これらの意見は必ずしも野生動物の生態の専門家や観察の専門家の話は少なく当事者の感覚による意見が多数のように見受けられます。できるだけ詳しい調査はもっと専門家を育て、各山地の実態を常に観察する自然保護員を増やし、できるだけ正しい現状を把握し自然のバランスを計り、共生の方針を立てなければいけません。そして、もし駆除するなら、これを自然の恵みとして頂くのです。無駄に殺してはいけません。

で、考えるのですが、シカが増えすぎてそのまま放置すれば山野が破壊されるという、ならば、シカを食べるのが一番だと。となると、シカを捕まえ食肉として使えるように飼育し、食肉(ジビエ gibier 獲物の肉)に加工し、鹿肉として都市に流通させ、食べるシステムを構築しなければなりません。事業化できれば若い猟師が育つでしょう。もちろん野生鹿肉が食するに安全のお墨付きが必要ですが、長野県知事であった田中さんがジビエ料理を食べようとフランス料理を広めていたが、多分鹿肉も安全なんでしょう。これを広めていきたいものです。

北海道ではエゾシカのジビエの事業を進めている人がおり、エゾシカ肉料理が盛んだそうで、ぜひ成功していただきたいものです。野生動物の固体調整がただ単なる駆除に終わらせないで食することで初めてこの殺生が納得できるのではないでしょうか。もっともジビエの主流は雉、鴨、鶉、兎でしょうか。

かわいい動物が殺されるなって考えたくないのですが、それぞれの生活の立場から考えると、どこまで自然と共生できるかが難しい問題にぶつかってしまいます。いたずらに感情に走るのではなく自然との共生を計らなければならないでしょう。また人間による自然破壊は勿論のこと野生動物による自然破壊も防がなければいけません。自然環境を整備させるのにどのようにお金を掛けるかが問題です。

しかし、一番罪つくりなのは人間で自然林を人工林に変え、その住人の野生動物を追い出し、山を放りぱなしにして、今頃になって騒ぎ野生動物を悪者にしているわけですが、この人間、日本人、儲けに走った施策の失敗は明らか、さあ、さあ、、、どうやって野生動物と共生を計れば良いのでしょうか。まだまだ研究課題がいっぱいです。となると、自然林を育てようとお金をかけて人手が入り植林して、それを鹿が食べ、ああ木が育たない。どうしようか。ある森かできるまで牧場で飼育しようか、でもその費用はどうするの、だれがやるの、大変だ。

日本の土地の素晴らしいことは小さな島に大勢が住んでいるにもかかわらず自然が残されてまだ野生動物がいる点です。この点は守らなければなりません。

ひさしぶり降り続く雪を味わいながらTV番組から自然保護や自然との共生について考えてみました。


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