グリーン島に向かう


ケアンズから船は沿岸を航行するという。オーストラリアの大珊瑚礁群グレートバリアリーフをかすめて行くと、ひょとしたら素晴らしい珊瑚海の鮮やかな色を期待していた。

風が強く白波が立ち少し船は揺れている。遠くを見ていると、稀に白波が不自然な形になる。船内では今まで、イルカやクジラやマグロを見たと自慢する人が多が、私はコイのような魚が泳ぐ姿と黒いものが飛び跳ねたのと三角のひれの様な物が現れた物しか見ていない。

どうもクジラらしいが決定的な証拠写真が撮れない。7月20日とうとう証拠写真が撮れた。確かにクジラだ。遠くで何頭ものクジラが絡み合ったりして波しぶきが豪快に上がりデッキは大騒ぎ、多くの人が一大イベントを満喫した。

珊瑚礁のコバルトブルーの海は見られなかった。ぐずついた天候でケアンズ港ターミナルに着岸、50隻ほどのヨットが対岸沖に係留、ヨットハーバーにはヨットやクルーザーがひしめき、リゾート地の雰囲気を醸し出している。街は高層ビルは見えず、緑に覆われている。

ケアンズの観光と言えば、森か海か。グリーンアイランドの珊瑚礁を見ることにした。

PBの大人数が押し寄せるため果たして飛び込みで切符が買えるか。なんて考えずに、とにかく人より早く行動しようと上陸許可の放送と同時に下船、急いでターミナルのインフォメーションに飛び込む。先客は一人のみ。案内嬢が「ここを曲がってこう行って、そこでツアーを申し込みます」と教えてくれる。迷わず300mほど離れたインフォメーションに入り一番で受付でグリーン島まで2人。受付おやじ、、うむうむ、パソコンを操作「二人しか残っていません。ラッキーでしたねー」と予約完了お一人様99ドル。行き当たりばったり。今日も幸先良し。二番目のPBでの知人達はグリーン島には行けなかった。

船は大きな双胴船でパワーに任せて強引に進む。曇り空から薄日が射し始め、灰色の海がコバルトブルーに変色、小さな島グリーンアイランドの長く細い桟橋に着岸。海は透明で小魚が泳いでいる。

この島は珊瑚礁で出来た島で、鳥が運んだのか木々ツタが茂り自然のままにされ、数多くの鳥が生息しているという。この自然を守るために厳しく管理され人間と自然の調和が計られれていると言う。トイレは水洗、浄化は、ゴミは、水や電気はどうしているのだろうか。島一周は40分もあれば楽勝だと言う小さな島だ。

帰船時間は14:30、島内自由時間は3時間半と短い。グラスボートの出発時間まで島を散策することにする。浜に出るとシュノーケルを楽しむ人たちが戯れている。遠浅で安心して泳いでいるようだが、砂浜まぎわの波は日差しで暖かいが、岸から離れると冷たそうだ。遊泳場とウインド・サーフボードは区分けされていた。

グラスボートの乗船時間が迫り、桟橋にもどる。乗客は10名ほどでゆったりと座れるが、人が固まっていた方が船底のガラスが人影で覆われ海底が見やすくなる。船長の巧みな操作で次から次へと魚が変わり、珊瑚が変わり、グラスボートの窓が劇場の様だ。旨そうな魚が現れる。鮮やかな小さな熱帯魚の群れが、スマートな魚が、平べったい魚が、シャコガイが大きな口を開けている。魚の顔を見ると上目遣いで何か欲しそうな感じだ。

船長は英語で解説するが、時々日本語の解説テープが流れる。それだけ日本人観光客が多いということだ。船長がいきなり手を窓から出す。何かを撒く、餌で魚を呼ぶ、餌付けをしているのだ。水面で魚たちが飛び跳ねる。解説によると専門家が自然環境を崩さないように餌は自然の物を特別に用意されているとか。

ウミガメが出てきた。大きなナマコだ。船が進む度に次から次ぎへと魚が現れ飽きさせない。満足な海中探訪だった。

昼食をとる。この歳でカードの使い方を覚えた。差し出されたカード読み取り機に自分でカードを差し込み、暗証番号を打ち込み、緑のエンターを押し、OKが出たらカードを抜き取り支払い完了。なるほど。注文が終わると円盤状の物を渡される。どうも注文品が準備できた時に知らせてくれる物らしい。なるほど。

ピピピと知らせが、昼食をいただく。ポテトフライを箸でつかんで食べていたら、そう箸が用意されている、いきなりクイナみたいな鳥がポテトをさらっていった。素早い、ずいぶん慣れている。レタスをちぎってやったが見向きもしない。

腹ごしらえを終え、今度は反対側に森を抜け海岸に出る。歩道は木製で原生林の中を進み海岸に出る。浜は平べったい板上の岩が波打ち際に伸びて、それが途切れるとまた珊瑚の砂の海岸となった。砂浜を時間を気にしながら急ぎ足で歩いたので、足が重くなった。速すぎて時間はたっぷり、ぼんやり珊瑚礁を見ていた。

帰りの船も強風の中全速で波を蹴り、イースター島のテンダーボートほどでは無いが波しぶきを上げケアンズ港に戻った。

ケアンズの町は広々とした道路で、車は少なく、まじめに信号に従うと少ない車にも拘わらず、なかなか歩行者信号が青にならず、忍耐が必要だった。フリーWIFIを求めてショッピングモールに行ったが、ネット環境は悪く諦めた。

市場は3時を過ぎていたので店じまいが始まり、店舗が少なかったが、残り少ない僅かなお金を使おうと、果物店でアボカドとモンキーバナナを買うが、値段が1kgいくらと表示されて、欲しいものの重さの見当がつかず、安いのか高いのか、多いのか少ないのか、お金が足りるのか足りないのか、四苦八苦して買い物をし、出されたお釣りの多さに驚いてしまった。ドルかセントか数字が聞き取れないのだ。

港の近くのビルの壁面に悲しげなアボリジニの顔と魚、何かを表現した壁画が描かれていた。港の公園には直径2mほどのブロンズの球体オブジェが地球と生き物と月と星と、何んだか意味ありげだが解らない。アボリジニの願いの表現かもしれない。

今日の自由行動は偶然の幸運に恵まれ、晴れ間の珊瑚礁の美しい砂浜歩きで足が棒になったが満足の一日となった。