新スエズ運河を航行地中海に入る


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時速30kmで走る船旅はたっぷり時間がある。そんな中、ウクレレを演奏してみたい人やしていた人が集り、謎の男アルべ氏がまとめ、クラブのようになり、10数人の集団ができた。毎日朝8時に集合、老若男女楽しく、3コードで3拍子か4拍子の易しそうな曲を練習をするようになった。運良くNの誕生日、通常レストランでの食事の時ウエイター達が集まってケーキを携えながらテープのハッピーバースデーをかけてくれるが、それに代わってクラブの皆さんが歌い祝杯をあげてくれた。この模様を船内TVで数秒紹介された。船は刻々とスエズ運河に向う。


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船は湿度が高く暑がこたえる。風が強く時々悪路を走るトラックのように突き上げる振動を受けて紅海を航行。紺碧の海でなぜか赤くはない。9月23日午後4時スエズ運河入り口で指定された位置に投錨。儀式のように航海士の指示に従って船員は厳かにもうもうと赤錆の煙を浴びながらウインチを操作、最後鐘を5回鳴らし停泊。5シャックル137m位鎖が降りている。ここで明日の運河に入る順番を待つ。山の端に落ちる太陽に警備艇が船の周りを覗き、スエズ運河に夢をふくらませた。みやげ物屋が乗船、エジプトに寄港出来なかったせいか、大賑わい、値段交渉に花を咲かせていた。アクセサリー、細工物の小箱、Tシャツやエジプト風寸胴着に絵葉書、ピラミッドなどなど。


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早朝4時静かに運河に向う。航行中前方デッキが開放され人々に埋め尽くされている。客船はピースボートのみ、各船は1マイル(1.8Km)の間隔で運河指定のラインを辿って時速15Kmで進む。右舷からの日の出を見ながら、ビター湖までは片側通行。近い将来上下両方向完成するらしい。左舷側は町が開発され建物や椰子の木などの緑が見え、右舷側は荒涼とした砂漠地帯、こちら側に浚渫した砂を排出しているようだ。


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ビター湖は広く下り方面の船が停泊し順番を待っている。湖を通過し、我々は今年開通したばかりと言う右側上り第2スエズ運河を航行している。このお陰で待ち時間が短縮されたと言う。運河の全行程両岸にはほぼ1Km間隔で監視所が有り、我々が通ると監視兵が呼び笛をピーピーと鳴らして、警戒しているのか、歓迎しているのか判らないが、大げさに手を振り友好の念を示す。


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運河を渡るには所々にフェリーがあり、船の間を縫って航行している。主要道路は舗装されている。運河拡張工事で岩盤掘削に日本の会社が活躍したと言う。運河は重要な施設、左岸側の集落側には壁で覆われた部分が多く、3箇所の空軍基地や軍の監視所や警察警備艇など、砂漠の熱さに耐えながら兵士達は頑張っているようだ。日中に工事作業は見かけなかった。


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運河は幅2,300m、深さは15mほどあるという。砂は崩れやすく常に浚渫しなければ埋まってしまう。写真では小さい浚渫船だが、水中の砂を先端で水ごと吸い上げてバイプで岸に送り込んで砂を取り除いているようだ。高く積まれた砂山に突然ビルのような建物が見えてくる、対向運河を航行する船だ。両岸の法面は石を積み固めてあるようだ。コンクリート壁はごく一部のみ、水面下は判らない。


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途中この新運河完成を祝った式典会場だったのか右舷側に運河を見渡せるように屋根の下に椅子が並び対岸にはモニュメントが作られ、多分完成式典が行われたのではないかと想像される施設を見たり、運河沿いの列車に逢ったり、次から次へと興味深い物が現れ退屈しない。。運河に沿った道には警察車両が船の速度に合わせ護衛してくれているように見守ってくれる。途中で軍隊に警備らしき行動が引き継がれた。


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運河終点のポートサイドに近づくころ砂塵が舞い目がざわざわする中、日本エジプト友好の色あせた小さな銘板が貼り付けられた立派なアル・サラム橋をくぐり、どんなに背伸びしてもピラミッドの姿はうかがえないが不穏なエジプトを無事通過。明け方4時から午後3時過ぎまで11時間にわたる長時間のパノラマ、スエズ運河の旅は終わった。前方に水平線が広がる地中海、これからヨーロッパの旅が始まる。35℃だが湿度24%と乾燥した中、強烈な日差しを浴び疲れきった体に冷えたビールが沁み込み生気を呼び戻してくれた。